外科(消化器外科・乳腺内分泌外科)

大腸手術を受ける方へ~ERASプロトコールについて

術後早期回復のためのERAS(イーラス)プログラムのご紹介

当院外科で採用しております、大腸手術の患者さん向けのシステムをご紹介します。
胃腸の病気が見つかり、腹部手術を受けることになったとしたら、どのくらいの入院期間になるかということは、心配なことの一つです。ひと昔前までは、どのようなご病気であっても術前数日、術後も4~5日は絶飲食でベッド上の安静が安全であるという管理が標準でした。近年は慣習に似た管理の一つ一つが見直され、よりストレスが少なく、より入院期間が少なくなる工夫がされています。
ERASとはEnhanced Recovery After Surgeryの頭文字をとった略語です。2001年に欧州臨床栄養代謝学会でERASに関する研究グループが組織されてから、その概念が普及してきました。術後患者が退院できない要因として「食べられない・動けない」に注目し、これを回避するための周術期管理を行うものです。ここ数年、国内の外科系学会や栄養系の学会で主題としてよく取り上げられ、大学病院やがんセンター系の施設からの安全性の報告も多くなり、徐々に採用が広まっていますが、伝統的な周術期管理の常識との差もあり、まだまだ施設も限定的です。当院からも学会活動(*1)を通じて積極的に広報しております。メディアでの紹介もされました(*2)。多職種の力が必要なため、当院では早期からERASチームを結成しております。当院での流れをご提示します。

  1. 外来看護師によるプログラムの説明:術前術後の流れを外来特別予約(30分)でご説明します。
  2. 入院までの日常生活の中で、体力づくりをお願いしております。そのための体力測定器を貸与いたします。
  3. 通常、手術前日に入院です。病棟看護師や薬剤師から、プログラムに沿った説明を再度いたします。
  4. 術当日朝、3時間前まで栄養剤や水分を摂取していただき、脱水を防ぎます。
  5. 手術中は麻酔薬や他の薬品も体に負担の少ないものを優先して選択しています。
  6. 術後夕方からベッドを起こして飲水やガムを食べていただきます。
  7. 翌日から提供食を開始します。
  8. 術後腸管運動の回復の妨げになるような過剰な点滴を避け、術後の痛みを投薬でコントロールしながら早い段階で歩行を再開します。
  9. 退院までの一定期間、理学療法士によるリハビリ指導を行います。

長期入院は必ず筋力が落ちてしまい、退院後の回復力も低くなってしまいますので、手術後10日程度での退院目標を設定しています。ご高齢の患者さま、ほかのご病気をお持ちの患者さまもおられますので、すべての患者さんに適用されるわけではありませんが、おひとりおひとりの状況に合わせてご提案いたします。
「早く日常生活に戻りたい」という方からだけでなく、「心配な入院生活で多職種からのサポートが励みになった」という感想もいただき、こちらも勇気をいただいています。

(動画を含めた実際の治療経過をご覧いただけます)

(*1)ERASについての当院の活動・業績

  • 真貝竜史、深田唯史、福﨑孝幸ほか;術翌日から食事摂取を開始するERASプロトコールにおけるPONV対策。第54回日本外科代謝栄養学会学術集会(2017年7月新潟)
  • 真貝竜史;患者さんに「やさしい」大腸がん治療とはなんでしょう?~当院のERASプロトコールのご紹介をもとにみなさんと考えましょう~。北千里地区公民館市民健康講座(2017年6月吹田)
  • 真貝竜史;ERASパスに組み入れたエレンタール服用指導と服用率、栄養評価の検討。第32回日本静脈経腸栄養学会(2017年2月岡山)
  • 真貝竜史、宮垣博道、福﨑孝幸ほか;ERASプロトコール適用鏡視下大腸切除術における術中輸液量制限と、術後アウトカムの関連。第29回日本内視鏡外科学会総会(2016年12月横浜)
  • 真貝竜史、福﨑孝幸、前浦義市;術翌日から食事摂取を開始する大腸癌ERASプロトコールでの周術期合併症。第71回日本大腸肛門病学会学術集会(2016年11月三重)
  • 真貝竜史、太田博文、福﨑孝幸ほか;大腸手術症例へのERASプロトコール適用は妥当か~高齢者の逸脱状況と鏡視下手術の意義について考察する~。第71回日本消化器外科学会総会(2016年7月徳島)
  • 真貝竜史、太田博文、福﨑孝幸ほか;大腸診療における多職種チーム医療 がんのリハビリテーションに則した6年間のERASチーム活動。第70回日本大腸肛門病学会学術集会(2015年11月名古屋)
  • 真貝竜史、太田博文、福﨑孝幸ほか;当院での大腸癌手術症例に対するERAS(Enhanced Recovery After Surgery:術後回復強化)クリニカルパスの5年間の成績。第69回日本大腸肛門病学会学術集会(2014年11月横浜)
  • 太田博文、真貝竜史、大東弘明ほか;当院における直腸手術に対する術後回復強化(Enhanced Recovery after Surgery :ERAS)プロトコールの成績。第69回日本消化器外科学会総会(2014年郡山)
  • 太田博文,藤江裕二郎,福永浩紀ほか;大腸がん手術症例に対する術後回復強化(Enhanced Recovery After Surgery:ERAS)プロトコールの安全性と有効性の検討.日本大腸肛門病会誌 64:214-223,2011
  • 太田博文,藤江裕二郎,清水香里ほか;大腸がんに対するERASを用いたクリティカルパスの実践から考える最適な退院時期.日本医療マネジメント学会雑誌 12(suppl.1):175-175,2011
  • 太田博文,前浦義市,遠藤和喜男ほか;術後回復強化(ERAS)プロトコールのクリティカルパスへの応用.日本医療マネジメント学会雑誌 11(suppl):326-326,2010
  • 太田博文,藤江裕二郎,福永浩紀ほか;術後回復強化(ERAS)プロトコールで大きく変わった大腸がん周術期管理.日本大腸肛門病学会雑誌 63巻9号595頁,2010
  • 太田博文,遠藤和喜男,藤江裕二郎ほか;当院における術後強化プログラムの中の周術期栄養管理.日本消化器外科学会雑誌 42巻7号1094頁,2009

(*2)メディアでの紹介

  • 2012年10月19日(金)
    週間朝日 MOOK がんで「困った」ときに開く本2013
    「患者さんの早期回復を第一に取り組んでいます」 (PDF)
  • 2012年9月1日(土)
    消化器外科NURSING
    FOCUS on 「ERASナースになってみませんか。」
  • 2012年1月20日(金)
    エキスパートナース
    特集「術後のケアがこんなに変わる!」
  • 2011年8月9日(火)
    山陽新聞(夕刊)
    「プロトコル法で入院短縮」
  • 2011年7月20日(水)
    日経メディカル
    「大腸がんに対するERASプロトコールで早期経口摂取は安全遂行可能 」
  • 2011年6月14日(火)
    共同通信
    「入院期間の短縮実現 術後回復強化プロトコル 欧米で拡大、日本へも」
  • 2011年5月26日(木)
    医師のための専門情報サイト MT(Medical Tribune) Pro
    「ERASで変わる大腸がん周術期管理/術後回復強化を目指す取り組み」
  • 2011年2月3日(木)
    医師のための専門情報サイト MT(Medical Tribune) Pro
    「ERASで周術期管理の向上を目指す」

  • かかりつけ医検索システム
  • 地域医療支援病院
  • 大阪府がん診療拠点病院
  • がん総合診療センター
  • 病院情報の公表
  • ドクター紹介
  • 済生会千里病院公式facebook
  • 地域連携 千里eサークル
  • 臨床研究に関する情報公開