消化器内科
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白血球除去療法(LCAP)
当院では、潰瘍性大腸炎の「LCAP療法」を行っています。
潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎とは、何らかの原因により、大腸の粘膜に炎症が生じ、潰瘍やびらん(ただれ)ができ、下痢や粘血便(血液や粘液、膿などが混じった便)が起こる病気です。通常直腸から始まりその後、その奥の結腸に向かって炎症が拡がっていくと考えられています。病状は、おさまったり(緩解期)、悪化したり(活動期)を繰り返すことが多く、長期にわたって,この病気とつきあっていく必要があります。
原因
原因は、腸内に棲む細菌のバランスがくずれたことが、大腸炎の発症や症状の進行に関わっているのではないかという細菌説。人間の免疫機構(体を外敵などから守ろうとする体内の防衛システム)が、体の一部であるはずの大腸粘膜を、敵と認識して攻撃し、破壊しているという自己免疫異常説。またこの病気は北欧や米国の白人やユダヤ人に多いことから、食生活が関係している食事説などが考えられていますが、はっきりした原因はわかっていないのが現状です。
症状
典型的な症状は血性下痢と腹痛です。
軽症例 : 下痢、粘血便、しぶり腹
重症例 : 血性下痢、腹痛、発熱、体重減少、貧血などの全身症状が多い
診断
潰瘍性大腸炎の診断はまず、症状の経過と病歴などの問診を行い、最初に血性下痢を引き起こす感染症と区別することが必要です。下痢の原因となる細菌や他の感染症を検査し、鑑別診断が行われます。その後、患者さんは一般的に注腸検査や大腸内視鏡による大腸検査を受けます。この検査で炎症や潰瘍がどのような形態で、大腸のどの範囲まで及んでいるかを調べます。さらに"生検"と呼ばれる大腸粘膜の一部を採取することで、病理診断を行います。潰瘍性大腸炎は、このようにして類似した症状を呈する他の大腸疾患と鑑別され、確定診断されます。
潰瘍性大腸炎の治療法
原則的には薬による内科的治療が行われます。しかし、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。
内科的治療
- 5-ASA製剤 (サラゾピリン・ペンタサの経口、座薬、注腸)
- 副腎皮質ステロイド剤(経口、経静脈、座薬、注腸)
- 白血球除去療法(LCAP)
- 免疫抑制剤(イムラン)
外科的治療
下記のようなケースでは手術の対象となることがあります。手術は大腸の全摘が基本となります。
- 大量出血がみられる場合
- 中毒性巨大結腸症(大腸が腫れ上がり毒素が全身に回ってしまう)
- 穿孔(大腸が破れる)
- がん化またはその疑い
- 内科的治療に反応しない重症例
白血球除去療法(LCAP)について
LCAP療法とは
現在、軽症や軽症に近い中等症の潰瘍性大腸炎は、サラゾピリンまたはペンタサや、少量のステロイド(プレドニン、リンデロン坐剤など)などによりコントロールすることができます。しかし、中等症や重症例、再燃緩解を繰り返す場合やなかなか緩解に至らない場合(難治例)は、薬物療法のみでは治療に限界があるのが現状です。
LCAP療法は血液を一度、体の外へ出し白血球を除去するフィルターを用いて炎症にかかわる細胞を取り除き、浄化された血液を体に戻し、腸の炎症を抑える新しい治療法です。
LCAPについて下図を参考にご説明しますと、献血時に用いるような少し太めの針を用いて肘静脈(ひじ)か大腿静脈(太もも)より、血液を連続的に取り出し、カラムで血液成分を吸着・除去し、反対の静脈へ戻す治療法です。1回の治療に要する時間は約1時間で約2000mLの血液がカラムを通過します。治療中に身体の外に出ている血液の量は約200mLで、治療が終了した後、カラムや回路に残った血液は生理食塩液と共に身体の中に戻します。
LCAP療法とは
炎症状態が続いている活動期には週1回の治療を連続5回(1クール)おこない、その後、下痢、出血などの臨床症状、炎症反応、内視鏡所見などからさらに5回(2クール)行うかを決めます。当院では、初めての患者さんの導入は入院で行い、問題なければ以後、外来にて施行しています。
予期される効果および副作用
潰瘍性大腸炎患者に対してLCAPの有効率は約70%です。発症からの期間が短い例は効きやすく、再燃と緩解を繰り返すことで腸管が線維化をおこし、かたくなってしまった状態や潰瘍が深い場合は治療効果が低いように思われます。またステロイドでみられるような重篤な副作用がほとんど認められないことが大きなメリットであると考えられています。
LACP療法についてのHP
こちらをご覧ください。